義歯はすべて同じ材料で作られているように見えますが、製作方式によって噛む力にどれだけ耐えられるかが異なります。最近発表されたメタ分析を並べてみると、結果ははっきりしています。コンピューターで設計した後に材料のブロックを削り出すCAD/CAMミリング方式は、曲げる力(曲げ強さ。噛んだときにたわんでから折れる点まで耐える力)で最も高い成績を出し、液体レジンを層状に積み重ねて固める3Dプリント方式は同じ項目で毎回最も低い順位にとどまりました。義歯を新しく作る、あるいは作り替える予定があるなら、この差が何によって生まれるのか、どこまでが確かでどこがまだ議論の分かれるところなのかを知っておく価値があります。
削り出すか、積み重ねるか
義歯の歯ぐき部分(義歯床)は、ほとんどがPMMA(ポリメチルメタクリレート)という合成樹脂で作られます。従来方式は、ワックスで型を取った後にペースト状のレジンを詰め、熱や化学反応で固める圧縮成形・射出成形・自己重合方式です。この方式は長年の臨床経験が蓄積されており、現在も健康保険が適用される総義歯(レジン床・金属床)の標準となっています。
デジタル方式は大きく二つに分かれます。口腔内スキャナーで読み取った口の中のデータや、既存の義歯をスキャンした値をコンピューター上で設計した後、CAD/CAMミリングは工場であらかじめ硬く固めておいたPMMAブロックを削り出して目的の形を作り出します。一方、3Dプリントは液体状のレジンを薄い層に積み重ねながら、その都度光で固めていきます。

この違いが強度の差を生む鍵です。あらかじめ固めたブロックは内部が緻密で気泡が少ない一方、層を重ねて固めた結果物は層と層の境界が弱い部分として残ることがあります。
噛む力の前で分かれる成績
製作方式4種類(圧縮成形・射出成形・ミリング・3Dプリント)をまとめて比較したメタ分析では、ミリングは曲げ強さ・弾性係数(硬く踏ん張る力)・表面の滑らかさのほとんどで1~2位を占めました。3Dプリントは同じ項目のほとんどで最も低い成績となり、まだ改善が必要だと評価されました。別のメタ分析も同じ方向を示しました。ミリングで作った義歯床は、3Dプリントで作ったものより曲げ強さと硬さが明らかに高かったのです。

ただし、優劣がすべての項目で同じ順序になったわけではありません。落としたりぶつけたりしたときに耐える力(衝撃強度)に関してだけは、むしろ古くからの方式である自己重合が最も強く、ミリングは中間、3Dプリントは今回も最も弱いという結果でした。従来の熱重合方式と3Dプリントだけを比較した研究でも、吸水量や表面の粗さには大きな差がありませんでしたが、硬く踏ん張る力は熱重合の方が高くなっていました。
時間が経つと差はさらに広がる
口の中の環境を模した人工老化実験(温度を上下させたり、コーヒーなどの着色液に浸したりする方法)でも同じ傾向が続きました。ミリングで作った材料は時間が経っても曲げ強さの低下が最も小さく、3Dプリント材料は最も大きく低下しました。3Dプリント材料は水をより多く吸い込む性質も併せて見られましたが、材料が水を吸うとわずかに膨張し、義歯が緩んだり変色したりする余地が大きくなります。硬さや表面の粗さは、一般的な温度の繰り返しだけでは大きく変化しませんでしたが、着色液に浸す条件では研究によって結果が分かれました。
それでも3Dプリントが使われる理由
強度だけを見ればミリングが優れていますが、だからといって3Dプリントが押しのけられているわけではありません。データさえあればその日のうちに出力できるため、急ぎで必要な義歯や仮に使う義歯には今も広く使われています。最近では3Dプリント用のレジンの配合を変えて、衝撃強度や引っ張る力に耐える度合い(引張強さ)、細菌の付着しやすさまで改善しようとする研究も続いています。ただし、このように配合を変えた材料は衝撃や細菌には強くなる一方で曲げ強さがかえって低下する場合も併せて報告されており、片方を得れば片方を失うという状態が繰り返されています。
現在、健康保険が適用される総義歯は従来方式で作るレジン床・金属床の義歯であり、ミリングや3Dプリントのようなデジタル方式は保険給付のリストに別途登録されていません。義歯を新しく作る予定があるなら、どの方式で製作するのか、長く使うことを念頭に置いているのかを担当の歯科医に尋ね、材料選びの参考にすると役立ちます。

