質問

前歯をぶつけて角が欠け、取れた破片を持って来院しました。この破片を再び接着する治療が可能かどうか知りたいです。

短い回答

破片がよく保存されていて、割れた面が元の位置に正確に合うなら、接着剤とレジンで再接着する治療を検討できます。 ただし、破片が乾燥していたか、破折線が歯髄(神経)まで達しているかによって接着前に必要な処置が変わり、すべての破片が再利用できる状態とは限りません。

なぜそうなのか

上顎前歯の破折片再接着を歯髄露出の有無で比較した図。Aは歯髄露出がなく接着剤で破片をそのまま再接着する過程を、Bは歯髄が露出しており保護材で覆ってから破片を再接着する過程を示す。

破片の状態と適合が再接着の可否を分けます

欠けた破片を再び接着する治療は、酸処理(接着のために歯の表面を微細に粗くする処理)と複合レジン接着技術を用いて、破片を元の歯冠形態に戻す保存的な方法です。自分の歯の破片で元の形と色をそのまま生かせる点が利点です。この方法が可能であるためには、2つのことが確認される必要があります。破片自体が砕けずに完全な形で保存されていること、そして割れた面同士を合わせたときに隙間なくぴったり合うことです。

破片が時間の経過で乾燥していたとしても、すぐには接着できないというわけではありません。生理食塩水などに浸して再び水分を含ませたうえで接着の手順を進め、接着部位を補強するために破折線に沿って斜めの溝を作っておくこともあります。そのため、破片を病院に持って行くときに乾燥した状態だったからといって、再接着をあきらめる必要はありません。

歯髄が露出しているかどうかで接着前の処置が変わります

破折線がエナメル質と象牙質にとどまり歯髄(神経組織)まで達していない場合、象牙質が広く露出していれば刺激を防ぐための保護処置を行ったうえで、すぐに破片を接着します。この場合は比較的簡単な手順で再接着まで進めることができます。

反対に、破折線が歯髄まで達し歯髄が直接露出している場合は、手順がもう一段階必要になります。受傷からどれくらい時間が経ったか、歯根がどれくらい成長しているか、歯髄が生きているか、露出範囲がどれくらい広いかによって、歯髄の上に保護材を覆う治療や部分歯髄切断術のような生活歯髄療法を検討します。歯髄の保存が難しい場合や壊死が進行していても歯を修復できる場合は根管治療を検討し、歯そのものの修復が難しい場合は抜歯を検討します。歯髄保護処置を終えたあと、同じ日のうちに破片をつないで接着する例もあります。こうした処置をせずに時間を置くと、歯髄が壊死したり(歯髄壊死)根尖に炎症が生じたりする危険が高まるため、歯髄が露出していることが確認された場合は、再接着の可否とは別に処置の時期を遅らせないほうがよいでしょう。

破折線が歯肉の下まで及んでいる場合は、アクセスのための処置が加わることがあります

欠けた境界が歯肉の下側まで及んでいる場合、接着部位に唾液や血液が混ざらないよう歯肉を挙上して視野とアクセス経路を確保する処置を先に行ったうえで、破片を再接着することもあります。この場合、再接着自体は同じ接着の原理を使いますが、準備段階がもう一段階加わると考えられます。

接着はどのように進めますか

破片を接着する間は、接着剤が隣の歯に付かないよう隔壁とテープで隣接歯を覆い、流動性のある複合レジンを接着面に薄く塗ったあと光で硬化させます。硬化したあとは接着境界部分を滑らかに仕上げ、継ぎ目が目立たないよう整えます。